ミドリムシ燃料がジェット機を飛ばす!?
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2019/03/08
「ミドリムシがジェット機を飛ばす」
なんて言っている人がいたら、なんとも奇想天外だなと思いますよね?
実は、これは冗談ではありません。
現在、ユーグレナ社を中心としてミドリムシのジェット燃料の開発が進められており、実用化がすぐ先の2020年に迫っています。その他にも、バスや自動車でも実用化の動きが活発化しているのです。
食品や化粧品にミドリムシが使われることによくビックリされますが、ジェット機を飛ばすなんて夢物語のようですよね。
今回は、ミドリムシをエネルギー燃料として実用化し、地球を健康にする取り組みについて紹介します。
1.ミドリムシがジェット機を飛ばす!?
ミドリムシがジェット機を飛ばす燃料として注目されているのをご存知ですか?ミドリムシとは、理科で習った直径0.05mmのとても小さな微生物のことです。
ミドリムシがジェット機を飛ばすことは、「地球を健康にする」プロジェクトの一つとして考えられています。ミドリムシが地球を健康にするとは一体どういうことなのか紹介します。
ミドリムシがジェット機の燃料に!
「ミドリムシがジェット機を飛ばす」といわれても、突拍子もなくてどういうことかよくわかりませんよね?
もう少し具体的に言うと、ジェット機の燃料としてミドリムシを使う、ということなんです。ミドリムシは、油脂(つまり油)を作ることができるので、その働きを活かそうというプロジェクトが進んでいるのです。
ミドリムシのジェット燃料実用化に向けた開発を中心になって行っているのはユーグレナ社。2005年に世界で初めてミドリムシの屋外大量培養に成功した企業です。
いま、横浜市、千代田化工建設(株)、伊藤忠エネクス(株)、いすゞ自動車(株)、全日本空輸(株)など、名だたる大手企業・自治体と協力をしてミドリムシ燃料の実用化に向けた開発が進められています。
2018年時点での目標は、東京オリンピックが開催される2020年にミドリムシ燃料のジェット機を飛ばすことだそうです。2010年にスタートした事業ですが、いよいよ間近に迫っている感じがしますね。もし実現したら、世界の注目を集めること間違いなしです。
そして将来的には、ミドリムシ燃料がジェット機燃料の1割(市場規模:約900億円)を担うことを目標としているそうです。
航空業界もミドリムシの力に期待している!?
ミドリムシ燃料の実用化に向けての取り組みはユーグレナ社が中心になって行われていますが、実は航空業界もこの取り組みに注目しているんです。
なぜだかわかりますか?
それには、二つの理由があります。
- 二酸化炭素排出量の削減
二酸化炭素が増えると、地球の温暖化や異常気象などのさまざまな問題が起こるといわれていますが、LCCの台頭によってこれまでよりも飛行機の量が増え、何も対策をしなければさらに二酸化炭素の量はほぼ確実に増えます。二酸化炭素排出量の削減は、航空業界全体の大きな課題なのです。
- 石油燃料の枯渇
石油系の燃料は、資源が限られています。
遅かれ早かれ将来的に枯渇することは間違いありません。また、産出量が少なくなると、石油の原価が上昇してしまいます。ミドリムシ燃料は、二酸化炭素、水、光によって大量に培養できるので枯渇の心配がなく、価格も安定します。
これらのメリットから、航空業界だけではなく、各産業界や世界の機関などからもバイオ燃料は大いに期待されているんです。
バイオ燃料の使用はすでに始まっている!
航空業界がバイオ燃料に注目していることを表す証拠もあります。
ミドリムシのジェット燃料はいま実用化に向けた準備がされているところですが、そのほかの藻類や木材、穀物などを利用したバイオ燃料を使ったデモンストレーションフライトが行われているんです。
ミドリムシはまだ準備中の段階ですが、ほかのバイオ燃料と比べて以下のメリットがあるので、こうしたニーズを受けて世界のエネルギー問題を解決する存在になることが強く期待されています。
- ミドリムシ燃料は、ジェット燃料にとてもよく似ていて利用しやすい
- 単一の種類の油脂を作るので、燃料の生成がしやすい
- 植物系のバイオ燃料と比較すると、少ないスペースで効率よく培養できる
2.ジェット機の他にも!?ミドリムシ燃料の利用法
二酸化炭素増加の抑制や石油資源枯渇の対策となりうるミドリムシ燃料。
ジェット機だけでなく、自動車やバスなどにもエネルギーが活用出来たら、さらに地球が健康になりそうですよね?
実は、バスではすでに実用化され、自家用車にもミドリムシのエネルギーが活用されようとしているんです。
ミドリムシ燃料のバス、2014年から運行中!
ジェット燃料の実用化がすぐ近くに迫っているとはいえ、未来のことだとまだ実感がわきにくいですよね?
そこで、すでに実用化されているミドリムシ燃料を紹介します。ユーグレナ社がいすゞ自動車と協力して運行しているDeuSEL®バスです。
DeuSEL®バスは、ミドリムシから作ったディーゼル燃料で走るバスのことで、いすゞ自動車藤沢工場と湘南台駅との間を毎日定期運行しています。
そして、2019年より、このバイオディーゼル燃料に変わって次世代バイオディーゼル燃料が使用されることが決まっています。次世代バイオディーゼルは、ミドリムシを原料として使用しながら、軽油とほぼ同じ働きをする燃料です。DeuSEL®燃料と異なり、特別なケアをしなくてもそのままミドリムシをバスの燃料として使用できる、ということです。
実際にミドリムシから作りだされるエネルギーを利用したバスが2014年から運行しているということにビックリですよね。この話を聞くと、なんだかジェット機も飛ばしてくれるのでは?と期待感があがりますね。
ミドリムシの燃料で走る移動販売用ワゴン
ユーグレナ社は、ミドリムシを使用した食品やドリンクを提供する移動販売カフェ「ユーグレナ・ファーム」を以前走らせていました。そのワゴンの燃料として、軽油にミドリムシのオイルを混ぜたものが使用されていたんです。
健康に良いミドリムシを地球にやさしいミドリムシ燃料が運ぶなんて、とてもエコな感じがしますね。
自動車を走らせる可能性も!?
ミドリムシがジェット機を飛ばすのはとてもスケールの大きな話ですが、自家用車がミドリムシで走ったら・・・それはそれで、スゴいことだと思いませんか?
実はミドリムシを自動車のガソリンとして活用するプロジェクトも、ユーグレナ社と自動車メーカーのマツダとの提携によりスタートしています。廃油(天ぷら油)とミドリムシ燃料を利用した乗用車用のガソリンは、2020年の実用化に向けて開発中です。
しかも、ミドリムシ燃料を作るときに生じるミドリムシの栄養分たっぷりの油以外の部分を、ごみではなく農業・畜産や漁業の餌として利用できるように供給するというビジネスモデルまで、すでに出来上がっているんです。
3.まとめ
「ミドリムシがジェット機を飛ばす」というのは夢物語に聞こえますが、実用化はすぐ目の前に迫っています。
ミドリムシ燃料は、二酸化炭素の排出を抑えることができることや、燃料の枯渇の心配がない、といったメリットから、航空業界をはじめさまざまな方面から期待されています。
東京オリンピックが開催される2020年に、ミドリムシ燃料のジェット機が空を飛んでいる姿にぜひ期待したいですね。