
いま注目のミドリムシ燃料!仕組みやメリットは?
category | ニュース
2019/03/25
生物としても、健康食品や化粧品としても、不思議な魅力がたくさん詰まったミドリムシ。さらに「バイオ燃料としてジェット機を飛ばせる可能性もある」なんていわれているのだから、ミドリムシ燃料の可能性には本当に驚かされますよね。
ところで、ミドリムシの燃料はどのような仕組みでつくられるのか、気になりませんか?1匹あたりの大きさが1mmにも満たない微生物があの大きな飛行機を飛ばす、というのだからすごい秘密が隠されてそうな気がしますよね。
ここでは、ミドリムシ燃料にはどんなメリット・デメリットがあるのか?それらを調べていくと、ミドリムシの魅力がさらに大きく感じられると思います。
1.ミドリムシがジェット機の燃料になる仕組み
ミドリムシが燃料になるってどういうことかわかりますか?
なかなか日ごろエネルギーについて考えることは少ないかもしれませんし、少し難しい話になってしまうかもしれませんが、仕組みが分かるとミドリムシのすごさが実感できると思います。
ミドリムシはバイオ燃料として開発中
バイオ燃料って知っていますか?
有名なものでは、トウモロコシやサトウキビなどがありますが、生物資源を使った燃料のことをいいます。
ミドリムシは1匹の大きさが1mmにも満たない非常に小さな微生物ですが、バイオ燃料として活用できると期待されていて、いま開発が進められています。
ミドリムシを使った燃料は、ジェット機の燃料にとても似ており、大量に培養できればそのまま燃料として使える可能性が高いんです。
2020年に人を乗せてフライトする計画が立てられています。
ミドリムシがジェット機の燃料になる仕組みとは?
ジェット機の燃料は、ケロシンという名前の灯油にとてもよく似た石油系燃料が使われています。ミドリムシから灯油ができるなんて、なんだかちょっと信じがたいですよね。しかも、ジェット機を飛ばそうと思ったら、相当な量が必要になりそうです。
先に結論をいうと、ミドリムシが直接ケロシンを作っているわけではないんですが、ケロシンに似た油脂を作り出します。
ミドリムシがジェット燃料になるまで
- ミドリムシが光合成をしてエネルギーを作り、パラミロンとして体内に蓄える
- 酸素が少なくなったとき、ミドリムシはパラミロンを分解してワックスエステルという油脂を作る
- 製造工場で、ミドリムシからワックスエステルを抽出する
- ワックスエステルから余分な酸素を取り除いたものがジェット燃料に!
※ポイント 二酸化炭素を増やさずに燃料を作れる
ミドリムシ燃料には、二酸化炭素を増やさずに燃料を作れるというメリットがあります。燃料として使用するときにミドリムシ燃料も二酸化炭素を排出しますが、その二酸化炭素は元々光合成をするときに大気から吸収したものです。まさに、「地球を健康にできる」燃料ですね。
ジェット機燃料の原料「ワックスエステル」
ワックスエステルって聞いても、なんだかあまりピンときませんよね。
でも、私たち人間にとってはとても身近な油脂で、人間の皮脂腺からも分泌されています。顔や頭皮を触ったときに指につく、あのアブラの主成分です。深海魚やクジラなどにも含まれていて、動物性の脂肪としてはそれほど珍しいものではありません。
ミドリムシから燃料を作るとき、ワックスエステルの含有量が高いものほど、効率の良い燃料となります。ユーグレナ社で培養されているミドリムシのワックスエステル含有量は30%ですが、割合が高められる研究も同時進行でに進められています。
2.ミドリムシ燃料にメリット・デメリットはあるの?
「ミドリムシがジェット機を飛ばす」ってなんだかワクワクしませんか?
ただし、ミドリムシが燃料として実用化されるには、石油燃料や他のバイオ燃料よりもメリットがないと浸透しません。
ミドリムシ燃料のメリットやデメリットについて紹介します。
メリットは「地球を健康にする」ための理想的なエネルギーであること
「地球を健康にする」エネルギーとして、ミドリムシは大いに期待されています。
具体的には、エネルギーとしてのメリットがこんなにたくさんあります。
・二酸化炭素量が増えない
石油燃料を使用すると大気中の二酸化炭素が増えてしまいますが、ミドリムシ燃料を使用すると大気中の二酸化炭素は増えません。
・食物との競合がない
バイオ燃料としてよく使われるトウモロコシやサトウキビなどは、本来人々の食材となるものです。燃料として使用すると、食物が不足してしまったり、値段が高くなってしまったりしてしまいます。
ミドリムシも食品として食べられますが、水・光・二酸化炭素があれば安定的に培養できるので、野菜や穀物のように不足したり、価格が高騰したりする可能性は低いでしょう。
・生産場所確保のために、大きく環境を損なわない
野菜や穀物を利用したバイオ燃料の場合、畑を作るために広大な土地が必要になり、そのために森林の伐採が行われる場合もあります。ミドリムシは培養プールで効率よく増殖させられるので、大きく環境を損なわずに培養できます。
・持続可能である
大量培養可能なミドリムシは、将来的にも継続して供給が可能です。
・既存のエンジンをそのまま利用できる
ミドリムシから作られる原料は、ジェット機の燃料や軽油にとてもよく似ています。
なので既存のエンジンを改造する必要なく、そのまま使用できます。
・燃料の生成がしやすい
ミドリムシが細胞壁を持っていないこともプラスに作用します。燃料の生成がしやすいことに加えて、生成した後にカスが残らないので、安いコストで燃料を生成できます。
・燃料以外の部分が有効活用できる
ミドリムシが燃料として使用できるのはワックスエステルの部分で、その割合は30%くらいです。しかし、残りの70%がゴミになるわけではありません。70%は、ビタミンやアミノ酸などの豊富な栄養素なので、家畜の飼料や漁業のエサとしての利用が考えられています。
いまの時点でのデメリットはコスト
ミドリムシ燃料には理想的ともいえるほどのメリットがあるので、実用化への期待が高まっていますが、デメリットについても気になりますよね?
最大のデメリットと思われているのは、燃料の製造コストです。
いまの時点での製造コストは非公開ですが、2025年に完成予定の大型工場設備が完成すれば、コストは1バレルあたり60~80ドルになる見込みとされています。
(2017年の原油の平均コストは1バレル60ドル)
ミドリムシ燃料のさまざまなメリットや原油価格のように世界情勢によって激しい価格の変動がないことなど、メリットがたくさんのミドリムシ燃料。現在デメリットの打開に向けて対策が進められています。
3.まとめ
大きな可能性に満ちたミドリムシは、ジェット機を飛ばす燃料としての活用も期待されています。
二酸化炭素の量を増やさないエコなエネルギーは、ユーグレナ社のスローガン「地球を健康にする」にマッチしていますよね。そして、エネルギーができる仕組みにも、私たちが摂取するときにデトックス効果を発揮してくれるパラミロンが関わっているなんて、ミドリムシの小さな体には不思議がたくさんつまっています。
製造コストという課題はありますが、メリットが非常にたくさんある理想的なエネルギーですので、今後のニュースに注目していきたいですね。